『妊娠と薬』

先日、厚生労働省のWEBサイト内の医薬品等安全性関連情報に新しいページができたとの案内文書を見ました。
ページのタイトルは「妊娠と薬」ですが、ちょっと気になる内容でしたので、少しご紹介したいなと思います。
 
▶︎妊娠と薬(厚生労働省
 
「妊娠と薬」なんて、今更新規で作ってどうするのか❓・逆に今までなかったのか❓と疑問に感じたのですが、これにはちょっとした事情があるようです👀
 
「妊娠と薬」で外せない話題として、サリドマイドという医薬品による薬害事件があります。
 
薬学部では必ず習う内容ですし、大きな社会問題となりましたので、ご存知の方も多いと思います。
ご存知ない方は「サリドマイド事件」でググっていただくと何かしらの記事に行き当たると思いますので、詳細はそちらでご確認いただければと思います。
 
サリドマイドは催眠・鎮静薬として開発された薬ですが、妊娠中の方が服用すると胎児に奇形を引き起こす副作用(催奇形性)がありました。
 
現在であれば妊娠中の方は服用禁忌とされるべき医薬品ですが、有効性や安全性がしっかりと評価・審査されずに上市されてしまい、妊娠中の方が服用し、最悪の事態を引き起こす結果となってしまいました。
 
あってはならない事件だと思いますが、これをきっかけに現在のような医薬品等の承認審査制度が形作られることになりました。
 
このような薬害を起こしたサリドマイドですが、難治性の疾患に対して治療効果があることが新たに発見されたため、厳重な流通管理体制のもと医療現場で使用されています。
 
サリドマイド(製品名:サレドカプセル)について】
  • 2008年10月「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の治療薬として承認。
  • 2012年5月「らい性結節性紅斑」の効能・効果の追加承認。
  • 2021年2月「クロウ・深瀬(POEMS)症候群」の効能・効果の追加承認。
※【参考】サリドマイド製剤安全管理手順(2022年7月1日 第8版改訂 藤本製薬)
 

妊娠中に服用できない薬💊

 
サリドマイド事件などを経て、医薬品等は定められた基準に従って有効性や安全性が評価・審査された上で上市されていますが、服用してはいけない・服用できない方については、医薬品等の添付文書中の禁忌の項目に記載することとされています。
禁忌以外の注意事項については、「特定の背景を有する患者に関する注意」などの項目に記載されています。
 
どういった形で記載されているのか、比較的身近だと思われる「解熱鎮痛薬」を例に見ていきたいと思います。
 
コロナワクチン接種後の解熱に使えるということでも記憶に新しい「カロナール」と「ロキソニン」の記載内容を比較していきます。
 
※4月12日に第一三共ヘルスケアよりOTCカロナール」の製造販売承認取得のアナウンスがありましたが、医療用医薬品添付文書を見ていきます。
▶︎OTC医薬品カロナールA」製造販売承認取得(第一三共ヘルスケア
⇨残念ながら、発売時期は未定とのことです。
 

原則として、カロナール」は妊婦の方(小児にも)に使える一方、ロキソニン」は妊婦の方(小児にも)使えないということが見て取れると思います。
 
今回は、医療用医薬品の添付文書で確認しましたが、OTC医薬品添付文書では体裁は違うものの「してはいけないこと」という項目に使ってはいけない方に関する記載があります。
 
添付文書からも情報を取得することができますが、分からないことや不安なことがあれば、医師や薬剤師に確認いただくのがベストです👍
 

あの薬も妊娠中は禁忌‼️

 
いよいよ本題ですが、昨年の11月に緊急承認を受けたと聞けばピンとくる方もおられると思います。
 
新型コロナ治療薬の「ゾコーバ錠(塩野義)」も、「妊婦又は妊娠の可能性のある女性」は服用禁忌となっています‼️
 
「ゾコーバ錠」添付文書より

※なお、「パキロビッドパック(ファイザー)」は、妊婦の方の服用は禁忌とされていません。
 
「ゾコーバ錠」のこれまでの動きについてはこちらよりご確認ください⬇️⬇️⬇️
ゾコーバ【その後。。。】 - 薬事とか労務とか、たまに■も。。。
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新型コロナ治療薬「ゾコーバ錠」の動きについてまとめています。
https://phsr-89266.hatenablog.com/entry/2022/12/30/010744

 

3月31日より通常の医療用医薬品と同じ流れで流通が始まった「ゾコーバ錠」は、これまでに4万人弱の方で使用されていますが、妊娠している方3名に使用されたことが報告されています。

 
これに対して流通管理体制を強化しては❓との声も上がりましたが、処方前に医療機関側でしっかり妊娠の有無を確認するように依頼することに留まりました。
※妊娠中の方3名の内、有害事象発生例が1例報告されていますが、薬の服用との因果関係なし、とされたためです。
 
▶︎新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(ゾコーバ錠 125mg)の使用にあたっての注意喚起に係る追加の情報提供(新資材の活用の依頼等)
令和5年3月17日 事務連絡

https://www.mhlw.go.jp/content/001074688.pdf
 
また、これに合わせて、患者側にも妊娠中の服薬について注意喚起を促す目的で最初にご紹介していた「妊娠と薬」というページが新たに公開されるに至りました。
 

まとめ

 
今回は「妊娠と薬」のページができた背景などをご紹介していきました。
 
行政側も色々と情報発信はしているのですが、ここまで辿り着くのは中々に難しいですよね( ^ω^ ;)
 
「妊娠と薬」に限らず医薬品の安全性にかかる情報は、薬剤師の方からもしっかりご案内いただけると思いますが、是非受け手である患者さん側からも積極的に質問していただきたいなと個人的には思います👍
 
質問して嫌がる薬剤師はきっといないハズ、ですから(^_−)−☆

 

 

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