【その①】でご紹介していた、うどんや風邪一夜薬本舗さんの「特製しょうが湯」。
今回は、こちらに使われている「蒸生姜」についてみていきたいと思います。
前回の記事は、こちらから。
寒い日には。。。【その①】 - 薬事とか労務とか、たまに■も。。。
前回も少し触れましたが、生姜は香辛料としてだけではなく、薬用としても重用されていて、色々な漢方薬の原料生薬としても使われています。
「生薬(しょうやく)」は、主に天然の植物(動物性のものや、鉱物もあります。)の薬効がある部分を加工したものです。
医薬品の品質標準書である日本薬局方(局方、JPとも)にも生薬の規格が収載されていますので、内容を確認してみたいと思います。
生姜(ショウキョウ)
本品はショウガ Zingiber officinale Roscoe (Zingiberaceae) の根茎で、ときに周皮を除いたものである。
乾姜(カンキョウ)
本品はショウガ Zingiber officinale Roscoe (Zingiberaceae) の根茎を湯通し又は蒸したものである。
両方とも食用部位を使っているのが分かりますが、「生姜」は[6]-ギンゲロール、「乾姜」は湯通し又は蒸したという点と[6]-ショーガオールが特徴的ですね。
また、それぞれの生薬の用途なども確認していきたいと思います。
薬用植物総合データベースより
生姜(ショウキョウ)
用途:芳香健胃薬、矯味薬。漢方では新陳代謝機能の改善を目標に嘔吐、せき、胸痛、腹痛、腰痛、下痢などに用いる 。
乾姜(カンキョウ)
用途:芳香辛味健胃薬、漢方処方用薬。漢方では生姜より温める作用が強いとされ、熱性薬・補性薬として用いられる。
「乾姜」は、辛味があって身体を温める効果が強いと言えそうですね。
生姜を蒸すと??
察しのいい方は気付かれたかもしれませんが、どうやら生姜を蒸すと身体を温める効果が高くなるようです。
なぜ蒸すとこういった変化が起こるのか、見ていきたいと思います。
生薬を主に加熱処理して加工することを「修治(しゅうち)」といいますが、加工することで生薬中の成分に変化が起きています。
修治の代表的な例として、生薬の「附子(ブシ)」がありますが、有毒なトリカブトを修治によって生薬として使えるようにしています。
「生姜」も修治することで「乾姜」になりますが、修治を行う過程で有効成分が次のように変化しています。
[6]-ギンゲロール → [6]-ショーガオール
この[6]-ショーガオールが「乾姜」の特徴を生み出している成分と言えそうですね。
ところで、熱を加えればいいなら熱いしょうが湯なら別にどんな生姜を使っても変わらないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
生姜の加熱処理に関して次のような研究報告があります。*1
- 生ショウガ中の6-ジンゲロール(ギンゲロール)と6-ショウガオール(ショーガオール)の割合は98:2であった。
- 60分間の茹で・蒸し加熱により、6-ショウガオールはそれぞれ3倍以上有意に増加したが、大半の6-ジンゲロールは残存していた(93:7茹で)、(92:8蒸し)。
また、この研究報告の中で、加熱調理した場合の[6]-ギンゲロールから [6]-ショーガオールへの転換率についても記述がありましたが、「蒸し」に比べると僅かであったとのことです。
通常の生姜も温める効果は期待できますが、「蒸生姜」にすることで、その効果をより引き出せるということが分かりますね。
まとめ
「しょうが湯」から始まり、生姜の効果についても簡単に見ていきました。
身体を温めるには「蒸す」という一手間を加えた「蒸生姜」が最適じゃないかな?と個人的には思っています(^^)
寒波が迫ってきています。
生姜には殺菌作用もありますし、風邪対策にも「蒸生姜」を使ったしょうが湯、是非試してみて下さいね👍
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*1:吉田 真美, 平林 佐央理. ショウガ中の6-ジンゲロールの加熱調理による変化. 日本調理科学会誌, 2015, 48巻 6 号, p. 398-404